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[S28] 死と復活・・その三(禅の公案)

   禅の公案は、中枢の死と復活をある程度人為的に引き起こそうとする中国で発達した禅修行の方法であると思われます。その典型は、無門関・第一則趙州狗子の公案に付した無門和尚の提唱に見て取ることができます。
周知のところですが、無門和尚の説くところをもう一度振り返りながら、これを中枢の死と復活という角度から眺めてみることに致します。

「参禅は須く祖師の関を透るべし」に続いて、「妙悟は、心路を窮めて、絶せんことを要す」ということが冒頭で宣言されます。『心路を窮めて、絶する』ということは、まさに中枢の死の端的です。中枢(の働き)を絶体絶命のところに追い込まなければなりません。それがなければ、妙悟は絶対に起きないと釘が刺されます。

そのためには、「通身より・・疑団を起こして・・・昼夜提ぜいしてい」る(携え続ける)ことが求められます。「平生の気力を尽」すことが求められます。「間断」なく提ぜいし続けることが求められます。
    しかも、その際にいかなる「会(理解)をなすことなかれ」。これは、中枢の働きを封じていることに他なりません。『心路を窮めて、絶する』ことの当然の展開です。中枢(の働き)を殺し尽くすということでしょう。

その時の状態たるや、「熱鉄丸を呑了するが如く」である、ということが述べられます。中枢(の働き)を殺すこと、『心路を窮めて、絶する』ことが、いかに苦しく、辛いことであるのか、しかし、そこを通過しなければならないことが言い含められます。ここは、中枢の働きを絶していることの禁断症状であるかのごとき感が致します。

しかし、その状態が続くと次第にどういうことになっていくかが示されます。それは、「従前の悪知悪覚を蕩尽し」、すなわち従来の中枢の働きの生産物・結果物をことごとく掃き尽くしてしまう、洗い流してしまうことになる、ということが示されます。前稿[ [S27]で、夜鷹が天空に向けて上昇し続けていくうちに、何が何だか全くわからなくなってしまうという状況がこのあたりとパラレルである感じがいたします。

脱線いたしますが、ここは、旧約聖書・創世記のノアの洪水を連想させます。ノアの洪水は何もかも呑み込んで流し尽くしてしまいます。すなわち、ノアの洪水とは、創世記の作者であるモーゼの頭の中に起きた事柄であって、それをモーゼがあのような話として記述したのではないのかと思います。但し、これは私の勝手な理解です。

しかし、中枢の死は死のままでは終わりません。死を通して、死に引き続き、「復活」へと至ります。
すなわち、「久久に純熟して、自然に内外打成一片」します。死が極まり、質的変化が胎動します。内も外もない、ただ一つに極まります。

   [注] ノアの洪水の中にも、一という数字が登場する。
     これは、内外打成一片の一なのではないか。


  やがて、「幕然として打発」するときがやってまいります。新たな生まれ変わりとしての復活、蝉が殻を抜けるがごとくに、それまでの殻=地平から脱して、新たなパラダイムへと出てきます。そのさまたるや、「只、自知することを許す」、自然と全部わかっちゃうよ。

中枢の死の手続きの苦しさ・辛さに較べ、復活のプロセスは何の手数もかからない、呆気ない幕切れとなります。「幕然として打発」すれば、あとは何の力も要しない「只、自知することを許す」という結末です。

しかし、そこは「法燭の一点」した地平です。「歴代の祖師と・・同一眼に見、同一耳に聞」き、「生死岸頭において、大自在」、「六道四生の中に向かって遊戯三昧」を得られる地平だ、と結ばれます。

禅門では、公案のことを殺人刀(殺人剣)・活人刀(活人剣)などとも呼びます。それは、両刃の刃です。公案によって殺される=絶体絶命の淵に追いやられるのは、中枢、あるいは中枢の働きです。そしてそのことを通して人は生き返り、復活します。殺人刀(殺人剣)『即』活人刀(活人剣)であることがうかがえます。

最後に、至道無難禅師の、あの有名な歌、「いきながら 死人となりて なりはてて おもいのままに するわざぞよき 」を味わいながら、この稿を終わりたいと思います。

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